結婚相談所の教科書 for オーナー・仲人
運営者向け集客・マーケ

公開:2026-08-04

更新:2026-08-04

結婚相談所が自治体の結婚支援事業を受託する——公募の探し方から応募書類・収益化まで

この記事の結論

少子化対策として自治体が持つ結婚支援の予算は、民間の結婚相談所が受託できる数少ない公的案件です。委託・補助・登録事業者という3つの発注形態の違い、公募情報の探し方、企画提案書で評価される書き方、婚活イベント運営や相談員としての参画形態、受託実績が本業集客にもたらす信用効果、そして会計・報告義務の実務までを、一人運営の相談所が現実的に取り組める粒度で解説します。

結婚相談所が自治体の結婚支援事業を受託する——公募の探し方から応募書類・収益化まで

この記事の要点

  • 自治体の結婚支援は委託・補助・登録事業者の3形態。狙うべき入口は形態ごとに全く違う
  • 公募情報は自治体サイトの入札・公募ページと少子化対策担当課への直接接触で拾う
  • 企画提案書は「集客の実行力」と「参加者の安全管理」を数字で書けるかで評価が分かれる
  • 受託の最大の価値は委託料ではなく、公的機関に選ばれた実績という信用資産にある

「予算がついている婚活市場」が、民間相談所の目の前にある

結婚相談所の集客は、広告費を投じて個人客を1名ずつ獲得する構造が基本です。しかし、既に予算が確保され、参加者募集まで行政が担う市場が、地域には存在します。自治体の結婚支援事業です。

なぜ自治体が結婚支援に予算を持つのか

厚生労働省の人口動態統計が示すとおり、婚姻数は長期的に減少傾向にあります。婚姻の減少は出生数の減少に直結し、自治体にとっては人口減少・税収減・地域機能の維持という経営課題です。そのため、少子化対策・地方創生の文脈で結婚支援に予算を配分する自治体が全国に広がっています。

民間の相談所にとって何が起きるか

項目通常の集客自治体案件
参加者募集自社で広告費を投下行政の広報網(広報誌・回覧・公式SNS)
会場費自社負担公共施設を無償/低額で利用
信用ゼロから構築「市の事業」という信用が最初から付く
収入の性質成果報酬(入会があれば)委託料(実施すれば確定)
参加者との関係見込み客直接勧誘は制限される場合が多い

最後の行が重要です。自治体案件は「その場で会員を取る場」ではありません。それでも取り組む価値があるのは、次の3つの資産が得られるためです。

1. 委託料という確定収入(成果に左右されない)
2. 公的機関に選ばれたという実績(サイト・提案書に書ける)
3. 地域の担当課・社協・商工会との人脈(次の案件と紹介の起点)

特に効くのは地方の相談所

都市部では競合が多く、自治体案件も広告代理店やイベント会社が受注する傾向があります。一方、地方では「地元で婚活を分かっている事業者」が他にいないケースが珍しくありません。商圏人口が小さく本業の伸びしろが限られる相談所ほど、この市場の相対的な価値は高くなります地方開業で成功する戦略)。

本記事は、自社が受け取る補助金開業で使える補助金・助成金)とは別の話です。行政の事業を受託して報酬を得る側に立つ方法を扱います。

編集部
編集部

「自治体の仕事なんて、うちみたいな個人事業主には無理でしょう」——これ、地方の相談所さんから何度も聞きました。でも実際に公募要領を読んでみると、法人格が不要な案件も普通にあるんです。要件を読まずに諦めている方が、本当に多い。読むだけならタダですから、まず担当課のページを開いてみてほしいです。

発注形態は3つある——委託・補助・登録事業者の違い

「自治体の結婚支援に関わる」と言っても、入口は3種類あり、必要な準備がまったく異なります

① 委託(業務委託契約)——最も収入が大きい

項目内容
仕組み自治体が事業を発注し、事業者が実施して委託料を受け取る
選定方法企画競争(プロポーザル)/指名競争入札/随意契約
金額規模15万円(単発イベント)〜800万円(年間包括)
応募要件営業年数・実績・保険加入などの要件が付くことが多い
難易度高(企画提案書の作成が必要)

② 補助・助成(イベント実施への支援)

項目内容
仕組み事業者が企画したイベントに、自治体が経費の一部を補助
金額規模5〜50万円/件(補助率1/2〜2/3が一般的)
特徴企画の主体は自社。集客・内容の自由度が高い
難易度中(申請書と実績報告が必要)

③ 登録事業者・協力事業者制度——最も入りやすい

項目内容
仕組み県・市の結婚支援センターに事業者登録し、案件を紹介される
金額規模単発の講師料2〜5万円、相談員の日額8,000〜15,000円
特徴登録自体は無料。個人事業主でも登録可の案件が多い
難易度低(登録申請のみ)

取り組む順序

```
③ 登録事業者になる(今月)
↓ 実績と担当者との関係ができる
② 補助を使って自主イベントを実施(3〜6ヶ月後)
↓ 実施実績が提案書に書ける
① 委託案件のプロポーザルに応募(次年度)
```

いきなり①を狙うと、実績要件で落ちます③から入って実績を作り、階段を上るのが現実的なルートです。

「随意契約」という近道

少額の案件(自治体により50〜100万円未満など)では、公募を経ずに随意契約で発注できる場合があります。この枠に入るには、担当課の担当者が「あの相談所に頼もう」と思い出す状態を作っておく必要があります。③の登録事業者として顔が見えていることが、そのまま近道になります

自主企画のイベント運営そのものについては婚活パーティーを主催する運営マニュアル、法人との提携という別ルートは法人提携で安定会員獲得で扱っています。

公募情報の探し方——3つのルートと年間スケジュール

公募は「探しに行かないと存在しないもの」です。待っていても情報は来ません。

ルート1:自治体サイトの公募ページ(基本)

確認する場所は決まっています。

ページ名の例掲載される情報
「入札・契約情報」指名競争入札・一般競争入札
「公募情報」「事業者募集」企画競争(プロポーザル)
「少子化対策」「こども政策」結婚支援事業の年度計画
「予算」「当初予算の概要」翌年度に何にいくら使うかが分かる

最も価値があるのは4つ目です。予算書に「結婚支援事業 〇〇万円」と載っていれば、その年度に必ず何らかの発注が発生します公募が出る前に、金額規模まで分かります

ルート2:都道府県の結婚支援センター

多くの都道府県が結婚支援センター(マッチングシステム運営・イベント実施)を設置しています。ここでは協力事業者・登録事業者の募集が随時行われており、通年で申し込めるケースが多くあります。

ルート3:担当課への直接接触(最も効く)

公募が出てから動くのでは遅い、というのが実務の感覚です。

- 市区町村の「子育て支援課」「企画政策課」「地域振興課」などが担当(自治体で名称が異なる)
- 「地域で結婚相談所を運営しており、市の結婚支援について情報交換させていただきたい」という趣旨で接触
- 営業ではなく情報提供の姿勢で臨む(地域の婚活実態のデータを持参すると歓迎される

担当者は「地域の婚活の実情」を知りたがっています。行政が持っているのは総務省統計局の国勢調査に代表される統計上の未婚人口までで、「なぜ結婚に至らないのか」という現場の質的情報は持っていません。相談所は年間の相談件数・年代別の傾向・成婚の実例という、行政が持っていない一次情報を持っています。これは営業材料ではなく、対等な情報交換の資源です。

年間スケジュール(一般的な自治体の場合)

時期行政側の動き事業者がやること
8〜10月翌年度予算の要求・編成担当課への情報提供・提案(最重要期)
12〜2月予算案の確定・議会審議予算書で結婚支援の項目を確認
3〜4月予算成立・公募開始公募要領の入手・応募準備
4〜6月選定・契約締結プロポーザル・プレゼン
6〜2月事業実施運営・報告
2〜3月実績報告・精算精算書類の提出

狙い目は8〜10月です。予算が決まる前に担当課と接点を持てた事業者が、翌年度の公募で有利になります公募が出てから初めて名前を知る事業者と、半年前から相談に乗っている事業者では、評価が変わりますもちろん選定は公正に行われますが、提案の解像度が違ってきます)。

地域の実情データを整理する手順は競合調査の実務手順、地域での認知づくり全般はオフライン集客を参照してください。

編集部
編集部

「8〜10月が最重要」というのは、行政の仕事をしたことがないと絶対に気づけない情報だと思います。公募が出るのは春。でも中身が決まるのは前年の秋なんですよね。春に慌てて応募書類を書いている事業者と、秋から会話に入っている事業者。同じ土俵に見えて、実は全然違う場所に立っています。

企画提案書で評価されるポイント——集客の実行力と安全管理

プロポーザル方式の案件では、企画提案書の出来が結果を決めます行政が何を心配しているかを理解すると、書くべきことが見えてきます。

行政側の3つの不安

1. 参加者が集まらず、事業が失敗して議会で追及される
2. 参加者間でトラブル(ストーカー・金銭・強引な勧誘)が起き、責任問題になる
3. 実績報告が出てこない・精算が合わない

提案書は、この3つの不安を先回りして潰す文書です。

評価項目と配点の典型例

評価項目配点の目安書くべきこと
集客計画25〜30点媒体別の想定到達数と過去実績
事業内容・企画20〜25点プログラム、参加者の体験設計
安全・トラブル対応15〜20点本人確認・独身確認・当日の体制
実施体制15点人員配置、当日の役割分担
実績・専門性10〜15点同種業務の実績、婚活支援の専門知識
見積金額10〜15点積算根拠の明確さ

集客計画の書き方——数字がすべて

抽象的な記述
> SNSやチラシを活用し、幅広く参加者を募集します。

数字で書く
> 募集目標:男性20名・女性20名(計40名)
>

媒体想定到達想定申込
市広報誌(全戸配布〇万部〇万人8名
当社会員・OB向け案内(〇名〇名12名
Instagram広告(予算3万円15,000imp10名
地域FM・地域紙6名
商工会・青年会議所経由4名

>
> 過去実施イベント(2025年〇月・参加者38名)では、同様の媒体構成で申込44名を獲得しました

「自社の会員・OBに案内できる」ことは、民間相談所の最大の差別化要素です。イベント会社にはこの母集団がありません。ここを明記しない提案書が多く、書くだけで差がつきます

安全管理の書き方——ここで専門性が出る

> 参加者の確認体制
> - 申込時に本人確認書類の提示を必須とし、氏名・年齢を照合
> - 独身であることの確認書への署名を取得(虚偽申告時の責任を明記)
> - 当日は男女別の受付を設置し、スタッフ4名(うち女性2名を配置
>
> トラブル防止
> - 連絡先交換は主催者を介したマッチング方式とし、当日の直接交換は行わない
> - 終了後2週間の相談窓口を設置(当社の通常営業時間内で対応)
> - 迷惑行為があった場合の退場基準を、参加規約に明記
> - 賠償責任保険(対人〇億円)に加入済み(証券写しを添付)

この記述ができるのは、日常的に会員の本人確認とトラブル対応をしている相談所だけです(独身証明書・本人確認の実務損害賠償リスクと賠償責任保険)。イベント会社との決定的な差がここに出ます

見積の書き方

総額だけを書かず、必ず内訳を出します

費目金額積算根拠
企画・運営人件費180,000円3名 × 8時間 × 準備2日
広報費60,000円Instagram広告3万・チラシ印刷3万
会場費0円市施設を利用(減免申請)
資材・保険25,000円名札・記入用紙・イベント保険
事務費35,000円通信・振込手数料・報告書作成
合計300,000円

「会場費0円(市施設利用)」のような、行政側のコストを下げる提案は評価されます。

受託業務の実際——イベント運営・相談員・センター運営の3類型

実際に受託する業務は、大きく3類型に分かれます。

類型1:婚活イベントの企画運営(最も件数が多い)

項目内容
委託料15〜60万円/回
工数準備20〜30時間+当日8時間+報告5時間
内容参加者募集、当日運営、マッチング、事後報告
難易度中(集客の責任が重い)

最大の山場は集客です。定員に満たないと、次年度の受託に響きます自社会員・OBネットワークを動員できることが、受託の実質的な条件になります(OB・OGネットワークの作り方)。

類型2:結婚相談員・アドバイザーとしての委嘱

項目内容
報酬日額8,000〜15,000円/年間80〜300万円
工数1〜2日、1日4〜6時間
内容センター来所者の相談対応、マッチング支援、講座講師
難易度低〜中(本業のスキルがそのまま使える)

本業と最も親和性が高い形態です。仲人としての面談スキルがそのまま報酬になります。ただしその時間は本業に使えません時給換算で本業と比較する視点が必要です(オーナーのタイムマネジメント)。

比較自治体相談員本業の面談
時給換算1,600〜2,500円会員1名の生涯価値から逆算すると3,000〜8,000円相当
収入の確実性高(実施すれば確定)低(成約次第)
信用資産高(公的委嘱)

単純な時給では本業が上ですが、信用資産と収入の安定性を評価に入れると判断が変わります。

類型3:結婚支援センターの運営受託(規模最大)

項目内容
委託料300〜800万円以上
体制常勤1〜2名+非常勤
内容マッチングシステム運営、相談対応、イベント年5〜10回、広報
難易度高(人員体制と実績要件が厳しい)

一人運営では受託困難です。スタッフを雇用している、または複数事業者の共同体(コンソーシアム)を組める段階で初めて現実的になります(カウンセラー採用完全ガイド)。

どこから狙うか

自社の状態狙う類型
一人運営・開業3年未満類型2(相談員委嘱)→ 類型1(単発イベント)
一人運営・実績あり類型1を年2〜4件
スタッフ2名以上類型1を複数+類型3の検討

収益源を複線化する全体設計は多角化戦略、安定収入の作り方はリピート収益モデルで扱っています。

編集部
編集部

相談員の委嘱、時給換算だと本業より安いんです。それでも僕が勧めるのは、あの肩書きが効くからです。「〇〇市結婚相談員」とプロフィールに書ける。これ、会員募集の場面でも、法人提携の場面でも、地味に強い。目先の時給ではなく、名刺に書ける一行を買っていると考えると、判断しやすくなります。

本業への波及——委託料より価値が大きい「信用」の使い方

自治体案件の本当のリターンは委託料ではありません直接の勧誘が制限される以上、収益源としては期待しすぎないほうが健全です。

得られる3つの資産と、その換金方法

資産1:公的機関に選ばれたという実績

使う場所具体的な書き方
自社サイト「〇〇市 結婚支援事業 受託(2026年度)」
Googleビジネスプロフィール投稿機能で受託・イベント実施を告知
法人提携の提案書「行政案件の受託実績あり」=信用の裏付け([[tob-corporate-partnership法人提携]])
次の公募実績要件のクリア+加点
プロフィール・名刺「〇〇市結婚相談員」

「市の事業を任されている相談所」という事実は、個人客の意思決定において、口コミ10件分に相当する信頼材料として機能します。特に女性会員と、その親御さんに効きます女性会員を増やす集客戦略)。

資産2:地域の人脈

受託を通じて接点ができるのは、担当課の職員だけではありません

- 社会福祉協議会(地域イベントの共催先)
- 商工会・商工会議所(法人提携の入口)
- 青年会議所・農協・漁協独身者コミュニティを抱える組織
- 地元メディア(地域紙・コミュニティFM)

この人脈は、翌年以降の集客チャネルそのものになります。

資産3:報道・広報への露出

自治体事業は行政の広報誌・記者発表の対象になります。自社では作れない露出です。

- 市広報誌(全戸配布)に事業者名が載る
- 地域紙の取材を受けやすくなる
- 自治体サイトからの被リンク(.lg.jp ドメイン)

最後の項目は、SEO上の価値が非常に高い点です。.lg.jp からの被リンクは、一般の相談所が獲得困難な権威ドメインからのリンクで、検索評価に長期的に効きます。プレスリリースと組み合わせた露出設計は広報・PR戦略で扱っています。

やってはいけない換金方法

❌ NG理由
イベント当日に自社パンフを配布公的資金による事業での特定事業者の営業行為
参加者名簿を自社会員募集に使う個人情報の目的外利用。重大な違反([[tob-privacy-protection個人情報保護]])
「市公認の結婚相談所」と表示事実と異なる。受託と公認は別物([[tob-advertising-compliance広告表現]])
参加者へ個別に営業連絡契約違反かつ信用失墜

特に3つ目は要注意です。「受託」を「公認」「認定」と書き換えた表現は、優良誤認のリスクがあります。「〇〇市結婚支援事業 受託」という事実の記載にとどめるのが安全です。

正しい設計

```
自治体事業を誠実に実施
→ 事業者名が広報誌・サイトに載る
→ 参加者が後日「〇〇相談所」で検索
→ 自社サイトで受託実績を確認
→ 問い合わせ(=自然な流入)
```

「取りに行かず、見つけてもらう」——これが自治体案件からの唯一の正しい導線です。

会計・報告義務の実務——精算でつまずかないための3つのルール

受託で最も軽視されがちで、最もトラブルになりやすいのが精算です。

委託契約で発生する義務

時期提出物
契約時業務計画書、体制表、保険証券の写し
実施中中間報告(案件による)
実施後実績報告書、収支決算書、証憑の写し、成果物
精算時請求書、精算書

ルール1:委託事業の帳簿を、本業と完全に分ける

「どんぶり勘定」が最も危険です。委託料は使途が限定された公的資金であり、本業の経費と混ざると、精算時に説明できません

実務では、会計ソフトの部門・タグ機能で分離します。

方法手順
部門設定「〇〇市委託事業」という部門を作り、全取引に付与
専用の支払方法可能なら委託事業の支出は特定のカード・口座に寄せる
証憑の保管領収書は委託事業分だけ別ファイルに

freee・マネーフォワードのいずれでも標準機能で対応可能です(会計ソフト選び)。

ルール2:人件費は「従事時間の記録」を残す

委託事業で最も指摘されるのが人件費です。「本当にその事業に何時間使ったのか」を証明できないと、経費として認められない場合があります

> 従事記録の例
>

日付従事者時間業務内容
6/12〇〇3.0h参加者募集チラシ作成
6/18〇〇2.5h会場下見・進行打合せ
7/06〇〇・△△8.0h×2イベント当日運営

日次で記録してください。後からまとめて書いた記録は、精算の場で見抜かれます

ルール3:按分が必要な経費は、按分根拠を先に決める

家賃・通信費・車両費など、本業と共用する経費を委託事業に計上する場合は、按分の根拠を文書化します。

経費按分基準の例
事務所家賃従事時間比(委託40h ÷ 月間稼働160h25%
通信費同上、または使用実態
車両費走行距離(会場往復〇km ÷ 月間〇km

按分は「事後に都合よく決める」のではなく、契約時に担当課へ確認しておくのが安全です。認められない按分は、返還の対象になります。

消費税の扱い

委託料は課税売上です。年間の課税売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の納税義務が発生します。自治体案件を複数受託すると、この基準を超えるタイミングが早まります。インボイス制度への対応とあわせて、受託前に税額のシミュレーションをしておくこと(確定申告・経費完全ガイド)。

税務・会計の相談先

公的資金の会計処理は一般の記帳より要求水準が高いため、年間100万円を超える受託を継続する場合は、税理士への相談を推奨します(士業活用ガイド)。国税庁の各種手続き案内も、事業区分の判断で参照できます

編集部
編集部

人件費の従事記録、これは本当に「その日のうちに書く」しかないです。3ヶ月後に思い出して書いた表って、なぜか数字がきれいに揃うんですよね。8.0h、8.0h、8.0h……。見る人が見れば一目です。スマホのメモでもいいので、終わったその場で残す。それだけで精算の景色が変わります。

よくある失敗パターン——集客不足・営業行為・報告漏れ

自治体案件で見られる失敗を5つ挙げます。

失敗1:定員に届かず、次年度を失う
最も多く、最も痛い失敗です。定員40名に対し参加18名といった結果になると、行政側は議会や住民への説明に窮します翌年度、その事業者に再度発注する判断は極めて難しくなります

対策は自社会員・OB名簿への案内を集客計画に組み込むこと、そして申込締切の3週間前時点で目標の60%に届いていなければ、追加施策を打つという中間チェックポイントの設定です。

失敗2:イベント当日に自社の営業をする
悪気なくやってしまうケースがあります。パンフレットの設置、名刺配布、「よろしければ当所にも」の一言——いずれも公的資金による事業では不適切と判断されます。一度でも指摘されると、その地域での受託機会は事実上終わります

失敗3:実績報告書を軽く見る
報告書の質が、次年度の評価に直結します「参加者40名、成立8組」だけの1枚報告では、行政は議会や上司に説明できません

評価される報告書の構成
> 1. 実施概要(日時・会場・参加者数)
> 2. 参加者の内訳(年代別・居住地別・性別)
> 3. カップリング結果と、その後の追跡(可能な範囲で)
> 4. 参加者アンケートの集計(満足度・改善要望)
> 5. 実施上の課題と、次回への改善提案
> 6. 収支決算

5番目が最も評価されます「次はこうすればもっと良くなる」を書ける事業者は、翌年も呼ばれます

失敗4:参加者情報を自社データベースに取り込む
個人情報の目的外利用に該当する重大な違反です。委託事業で取得した個人情報は、事業終了後に契約に従って返還または廃棄します。自社の見込み客リストに混ぜることは絶対に行ってはいけません個人情報保護の5つのルール)。

失敗5:赤字で受注する
実績欲しさに、原価割れの金額で応札するケースがあります。委託料20万円の案件に、準備30時間+当日8時間+報告5時間43時間を投下すれば、時給換算4,650円。ここから広報費・資材費を引くと、実質的な時給は2,000円台まで落ちます。

1回目は実績投資として許容できても、それを毎年続けると本業が痩せます2年目以降は、適正価格で見積もること。

失敗影響範囲回復可能性
集客不足次年度の受託中(改善提案で挽回可)
当日の営業行為その地域での信用
報告書の手抜き次年度の評価
個人情報の流用法的責任・全事業極低
赤字受注本業の収益高(価格改定)

成功事例——市の婚活イベント受託から法人提携2社につながった相談所M

中国地方で一人運営をされている相談所Mさん(開業3年目・当時の会員31名)の事例です。

着手前の状態
- 商圏の25〜49歳未婚人口は約9,200人と小さく、会員数が28〜32名で停滞
- 広告費を月5万円投じても、問い合わせは月3〜4件
- 「これ以上は商圏の限界かもしれない」と感じていた

動いた順序(14ヶ月)

① 登録事業者になる(1ヶ月目)
- 県の結婚支援センターの協力事業者に登録申請のみ・費用0円
- 3ヶ月後、セミナー講師の依頼(謝金30,000円が1件入る

② 担当課へ情報提供(4ヶ月目・9月
- 市の企画政策課へ連絡し、「地域の婚活実態について情報提供したい」と面談を依頼
- 持参した資料:自社の3年分の相談データ(年代別・職業別・成婚までの平均期間)近隣3市の相談所数の比較
- 担当者から「来年度、婚活イベントを検討している」との情報を得る

③ 補助制度で自主イベントを実施(7ヶ月目)
- 市の地域活性化イベント補助(上限15万円・補助率1/2を申請し採択
- 参加者32名(男性16・女性16)、カップル成立6組
- この実績が、翌年度のプロポーザルで「同種業務の実績」として書けるようになった

④ 市の委託事業に応募(11ヶ月目)
- 企画競争(プロポーザル)に応募し、3社中1位で受託(委託料42万円
- 評価が高かった項目:集客計画(自社会員・OB48名への案内を明記)安全管理(本人確認・独身確認書・保険加入)

⑤ 受託事業を実施(13ヶ月目)
- 参加者41名(定員40名を超過)、カップル成立9組
- 実績報告書に、アンケート集計と次回への改善提案5項目を記載

14ヶ月後の結果

指標着手前14ヶ月後
自治体関連の収入0円63万円(講師3万+補助15万+委託42万・実額)
月間問い合わせ3〜4件9〜11件
在籍会員数31名52名
法人提携0社2社(商工会経由で紹介)
広告費5万円3万円(削減)
自治体サイトからの被リンク02本(.lg.jp)

Mさんの言葉
委託料の42万円より、その後に起きたことのほうが大きかったです。市の広報誌に名前が載って、地元紙に取材されて、商工会の集まりで『あの婚活の人ですよね』と声をかけられるようになったそこから法人提携が2社決まりました

一番効いたのは、9月に担当課へ行ったことだと思います。公募が出る半年前です。あのとき『情報提供させてください』で行ったから、翌年の企画に自分の話が少し反映されていた営業に行っていたら、たぶん門前払いでした

商圏人口9,200人という制約は変わっていません。それでも会員が31名→52名に増えたのは、商圏の外側にある「信用」というチャネルを開いたからです。

編集部
編集部

「営業に行っていたら門前払いだった」——ここ、本質だと思います。役所の方って、売り込みには本当に慣れていて、瞬時にシャッターが下りる。でも『地域の婚活の実情をお伝えしたい』でデータを持っていくと、逆に話が止まらなくなる。彼らは現場の数字を持っていないんです。持っているのは僕らのほうなんですよ。

まとめ・次のアクション

自治体の結婚支援事業は、委託料そのものより「公的機関に選ばれた実績」を得るための市場です。要点を整理します。

1. 入口は3形態(委託・補助・登録事業者)③登録 → ②補助 → ①委託の順に階段を上る
2. 公募情報は自治体サイトの「予算書」で先読みできる。公募ページを待つだけでは遅い
3. 動くべきは8〜10月(翌年度予算の編成期)。公募が出る半年前
4. 提案書では集客計画を媒体別の数字で書き、自社会員・OBへの案内を明記する
5. 安全管理の記述が民間相談所の最大の差別化(本人確認・独身確認・保険)
6. 直接勧誘は制限される広報誌・被リンク・人脈という間接的な流入で回収する
7. 委託事業の会計は本業と完全に分離し、人件費は日次で従事記録を残す
8. 定員割れと当日の営業行為は、その地域での受託機会を失う二大要因

今週やること

期限アクション
今日都道府県の結婚支援センターの協力事業者登録ページを確認する
3日以内自治体サイトの「予算」ページで、結婚支援関連の項目と金額を調べる
1週間以内前年度の公募実績(誰がいくらで受託したか)を確認
2週間以内自社の相談データを1枚の資料に整理(年代別・職業別・成婚までの期間)
1ヶ月以内担当課へ「情報提供」の面談を申し入れる(営業ではなく情報交換)
次の8〜10月翌年度予算の編成期に、改めて提案・情報提供を行う

すぐに始められるのは、登録事業者への申請です。費用は0円、必要なのは申請書1枚そこから講師依頼が1件入るだけで、履歴書に書ける実績が1つ増えます階段の1段目は、今日踏めます

NAMI-RENSAの結婚相談所マーケティング支援について

自治体案件で得た「〇〇市の結婚支援事業 受託」という実績は、サイトに掲載して初めて集客資産になります。広報誌を見た人も、地域紙で名前を知った人も、最終的には検索してあなたのサイトを見ますそこで実績が伝わらなければ、せっかくの信用は流れて消えます

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編集部
編集部

自治体案件、ハードルが高そうに見えて、入口の「登録事業者」は書類1枚です。まずはそこだけ。そこから先の景色は、1段上がってから考えても間に合います。

よくある質問

Q. 自治体の結婚支援事業は、個人経営の結婚相談所でも受託できますか?

A. できます。実際、地方自治体の婚活イベント運営や結婚相談員の委嘱は、地域の小規模事業者が受託しているケースが少なくありません。自治体側も地域内の事業者を優先したい事情があり、大手より地元の相談所が有利になる場面があります。ただし応募要件として、法人格の有無、営業年数(2〜3年以上を求める案件がある)、同種業務の実績、損害賠償保険への加入などが設定されることがあるため、公募要領の要件は必ず事前に確認してください。要件を満たさない場合でも、登録事業者制度や講師としての単発参画なら個人事業主でも参加できる案件が多くあります。

Q. 自治体の公募情報はどこで見つけられますか?

A. 第一に、対象自治体の公式サイト内にある「入札・契約情報」「公募情報」「事業者募集」のページです。多くの自治体で年度初め(4〜6月)に翌年度分の企画競争が集中します。第二に、都道府県の少子化対策担当課・こども政策担当課が運営する結婚支援センターのサイトで、協力事業者の募集が出ることがあります。第三に、担当課への直接の情報収集です。公募が出る前に事業構想の段階で意見を求められることがあり、日頃から地域の担当者と接点を持っている事業者が有利になります。年間スケジュールを把握し、前年度の公募実績を調べておくと動きやすくなります。

Q. 受託するとどのくらいの収入になりますか?

A. 案件規模によって幅が大きく、婚活イベント1回の運営受託で15〜60万円、年間を通じた結婚支援センターの相談員業務で年80〜300万円、複数イベントを含む包括委託で年200〜800万円程度が実務上よく見る水準です。ただし自治体案件は利益率が高くありません。人件費・会場費・広報費を差し引くと、手元に残るのは委託料の2〜3割というケースが一般的です。収益源としてより、地域での認知と信用を獲得する投資として位置づけ、そこから本業の入会につなげる設計にするほうが現実的です。

Q. 受託した場合、自社の会員募集をしてもいいのですか?

A. 多くの場合、委託業務の中で自社サービスへ直接勧誘することは制限されます。公的資金で実施する事業で特定事業者が利益を得る形になるため、公募要領や契約書に禁止条項が明記されていることが一般的です。ただし、事業者名が主催・運営として公表されること自体は制限されません。実務では、イベントの案内チラシや当日の運営に自社名が出ることで認知が広がり、後日に検索して問い合わせが来る、という間接的な流入が中心になります。この線引きは案件ごとに異なるため、契約前に担当課へ必ず確認してください。

Q. 受託した業務の会計処理で注意すべき点はありますか?

A. 委託料は事業収入として計上し、対応する経費と紐づけて管理します。特に重要なのは、自治体から求められる実績報告と精算です。委託契約では、支出の内訳を証憑(領収書・請求書・支払記録)とともに報告し、認められない経費が判明した場合は返還を求められることがあります。実務上の要点は、①委託事業専用の帳簿区分を作り本業と混在させない、②人件費は従事時間の記録を残す、③按分が必要な経費(家賃・通信費)は按分根拠を文書化する、の3点です。会計ソフトの部門機能やタグ機能を使えば分離は容易です。

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